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御冥福を御祈り申し上げます。


とても残念なことがあった。
20年来の御付き合いにあった小川英二さんが亡くなったのである。一昨日の夜半、突然、心筋梗塞に見舞われて帰らぬ人となった。


かつて、山口県は宇部市で開催されていた「宇部興産ゴルフトーナメント」という試合を憶えておいでだろうか? 宇部カントリークラブで5月末頃に開催されていた歴史と権威ある試合。20年前この試合に出場すべく宇部空港に降り立った朝、私は小川英二さんと出会ったのである。

突然、目の前に現れた小川英二と名乗る老紳士は、「合田プロ、試合会場まで僕が送りますから」と言う。もちろん見ず知らずの方である。
私は丁重に御断りをしたが、この小川さんと名乗る御人、実に強引でガンとして私を宇部カントリークラブまで送ると言う。仕方がないので、有り難く御言葉に甘えることにした。
試合会場である宇部カントリークラブは、宇部空港から15分ほど。
かくして私は御礼の言葉を述べ、この不思議な老紳士と別れた。だが練習ラウンドが終わる頃、再び、この老紳士は現れたのである。そして今度は、その週に私が滞在するホテルまで送ってくれると言うのだ。これがまた、ガンとして送ると譲らない(笑)仕方がないので、またしても御言葉に甘えることとした。
まったく不思議な人が世の中には居るもんだ、と思っていると、「昨年、この試合で合田プロを観戦して、僕は合田プロのプレーが凄く気に入ってしまってね」と、小川さんは今回の不思議な申し出の種明かしをしてくれた。この何とも有り難くて嬉しい御話に、私はプロゴルファー冥利に尽き、感極まり、車中で幸せの余韻にヒシヒシと浸っていた。だが…
暫くすると、小川さんの運転する車が、どうやら私の宿泊するホテルとは丸っきり違う方向へと進んでいることに気がついた。そしてそれに気がついた頃には、既に車は小川さんの自宅前に停車しつつあったのである。
私は小川さんに問うた。これはどういうことですか?。
そして、私を車から降りることを促す様に小川さんの奥様を始め息子さん御夫婦や御孫さん達が現れると、小川さんが言った、「合田プロ、今年から宇部の試合の時には我が家に滞在して下さい。因みにホテルはキャンセルしておきましたから」 満面の笑顔でである。
驚きを通りこして呆れ果ててしまった。
いったい何者なんだ?この人は…しかし、ホテルはキャンセルされてしまったし、どこやら判らないところの誰とも知らない人である。本音を言えば、結構怖い。
しかし、私はこの強引で不思議な老紳士を既に気に入ってしまっていたのかもしれない。
もうどうとでも好きなようにしてくれ、という心境にもなっていた。

それからは毎年、山口県で開催される宇部興産ゴルフトーナメントの時には、この小川英二さん宅に御世話になることとなった。それは結局、家族ぐるみの御付き合いに発展した。
山口県は宇部市で運送会社を経営する小川さんは、後に御勇退をされ、現在、会社は息子さんである小川茂さんが継いで頑張っておられます。
万事に強引で強気の小川さんに似ず(笑)茂さんは、眼の優しい、誰にでも好かれる良識に満ちた社長さんです。
その茂さんから、急な電話を頂いたのは4年前。
癌を患った小川さんの術後の経過がおもわしくなく、ここ2ヶ月の間、病院のベッドに寝たきりになっていて、このまま逝ってしまう可能性があるとのこと。
とりもなおさず私は、羽田空港に向かい山口県へと飛んだ。手術直後に小川さんと電話で話したが、「こんなの病気のうちにはいらない」と豪語していたのに、イヤな予感が機上の私を苛んだ。
宇部空港には茂さんが迎えに来てくれた。茂さん曰く、何より気力が無い状態で、ベッドから身体を起こすことさえしないのだと言う。
さて緊張の対面は…私の心配を余所に、久々に会った小川さんの顔は晴れ晴れとしていて、「プロ!元気そうで安心した」と、御自身が元気そのものという感じだったのである。
そして奥様に「ちょっと身体を起こせ。これからプロと昼飯を喰いに行くから」と徐に宣うのである。
驚いたのは奥様と茂さんだ。だって親父!2ヶ月も動いてないの本当にに大丈夫なのか? とは茂さんの言。馬鹿言うな!お前達もつれていってやる とは小川さんの言。
かくして小川さんは普段着に着替え、病院の廊下をユックリだがシッカリと歩む。その姿を見てビックリする看護士達 「小川さんが歩いてみえる!?」 私には何が変なのかが判らない(笑)。
海の見える和食屋で食事をした後、小川さんの会社に寄ったのだが、ともかく社員の方々の驚きようといったら凄いものが御座いましたね(笑)。泣いている社員さんも居たりして、もう大騒ぎ。
主任さんなんか泣きながら、「毎月毎月、合田プロに来てもらえ~!」だからね(笑)。
そのときの私、ほとんど “英雄” とか “神様状態” である(笑)。
その後、病院に入る前で小川さんと二人、タバコを吸いながら「まずはゴルフが出来るようにならなきゃね」。ゴルフが出来るようになったら、また来るよ、と約束をして私は帰路についた。


今はただ…小川さんの御冥福を御祈り申し上げる。
あなたは素晴らしい人だ。あなたに会わせてくれた運命に感謝しております。

小川さんとの出会いは私にとって大切な宝物の一つである。






※上記、小川さんとの会話や遣り取りは冗談のようなくだりだが、全て紛れもない真実である。

  by h_gohda | 2009-08-28 17:49 | 闘ふということ 

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